アメリカを代表する写真家の一人、ユージン・スミスが1975年に当時の妻アイリーン・美緒子・スミスとともに発表した写真集「MINAMATA」を俳優ジョニー・デップが映画化した。この映画を観るまでユージン・スミスという写真家のことはまったく知らなかった。太平洋戦争で戦場カメラマンとして活躍し、沖縄戦の写真も撮っていた。戦後は、戦場でのトラウマを抱えアルコール依存しながらも「LIFE」誌に名作を発表していた。映画は、日本の4大公害病の一つ、水俣病患者の写真を見せられ衝撃を受け来日、その悲劇を世界に知らしめることになった1枚の写真「入浴する智子と母」が生まれるまでの物語である。1970年代には、水俣病が、工場排水による汚染が明らかになっていたにも関わらず、企業チッソは補償を拒んでいた。大きな抗議行動が起こる中、運動に対して、札束と、暴力的脅しによる切り崩しも激しかった。映画では、写真ネガを焼かれるシーンもあった。資料は消し去るという思想は、いずこも共通している。映画を観て、あらためて世界中で起こっている公害について考えた。大資本の企業の利潤追求のために、いかに多くの庶民が苦しめられているか。福島原発事故も新たな公害である。海洋汚染は、広くじわじわと迫ってきている。人間の尊厳をかけたたたかいはまだまだやめられない。(O)
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