2018年5月10日木曜日

おらおらで ひとり いぐも

第158回芥川賞を受賞した『おらおらでひとりいぐも』を読んだ。東北弁での主人公桃子さんの内なる声から始まり、読んでいると桃子さんになりきった不思議な気分になる。桃子さんは、24歳に故郷を飛び出し身ひとつで東京へ、夫周造の理想の女になるように生きてきたが、突然の夫の死。そのときの、東北弁で次々とたたみかけるような心の表現がすごい。幼い頃の自分や祖母、自分の子どもたちとの会話、夫との思い出等々入り乱れて、心の揺れと葛藤がぐいぐい伝わってくる。でも、夫を亡くした哀しみや孤独感だけではない、何かが湧き出してくる。新しい世界が開けたような・・・「もう今までの自分では信用できない。おらの思ってもみながった世界がある。そごさ、行ってみって。おら、いぐも。おらおらでひとりいぐも。」74歳の桃子さんが、前を向いて立っている姿が思い浮かんだ。著者の若竹千佐子さんは、新婦人の会員でもある。3/29付新婦人しんぶんのインタビューで、「ひとりでいぐも」もいいけど「みんなでいぐも」もやっぱり大事と言われていたので、次作も期待したい。   (O)

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