「宝島」(第160回直木賞受賞作品)
4戦後アメリカ占領下の沖縄で、基地に潜り込み、「生還こそがいちばんの戦果」と言うリーダーのもと物資を盗み出す少年少女たちが主人公。そのリーダーは突然消息を絶つ。読み始めてすぐ、実話じゃないのかと思うほど真に迫ってくる。米憲兵が地元警察より上にあり、住民の人権はないに等しい扱いを受けるさまや、麻薬・売春・暴力団抗争、やがて復帰闘争や米兵犯罪への抗議デモ、基地撤去闘争へと現実さながらの描写が熱い。主人公たちが投獄されて瀬長亀治郎に出会ったりする。本土返還時「核抜き・本土なみ」という沖縄の願いがどうなるのかと固唾をのんで見守る人々。でも一方でこれまでと変わらない現実を突きつけられる。命を落とした仲間たちを想いながら「だからまた始めよう、そろそろほんとうに生きるときがきた。」と砂浜に立つところで終わっている。少年少女たちが大人になっても心に生きつづけたリーダーの行方がミステリーであり、読み応えがある小説だった。(O)
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